アートマネジメント講座 #001:
プロジェクトを構築する
#001
プロジェクトを構築する(公開トークショー)
2013.09.28(sat)|プロジェクト・ショーケース#0
桂英史[東京藝術大学大学院映像研究科教授]
+向井知子[日本大学芸術学部デザイン学科准教授]+熊谷保宏[日本大学芸術学部演劇学科教授]
■レビュー
プロジェクトそれ自体は、必ずしもアートフォーム(芸術表現の形態)を決めて進行していくものではない。その限りにおいて、現段階で出てきているものは、きわめてオーソドックスであり、それがこれから果たして表現になりうるのかはわからないと、まず、桂さんは言及されていた。
このプロジェクトは、アートマネジメントを担う人材養成の一環として活動しているが、ひとつの領域だけを扱える人材をマニュアル通りに育てることが目的ではない。各々の専門領域で制作を行ってきた誰かが先頭を切って進行するのではなく、それぞれが理解し合うための対話から共通言語を見つけ、そこから改めて表現とは何か、作るとは何かを考え、制作していく場として機能している。このショーケースも、そういう意味では、制作プロセス途上のファシリテーションを公開しながら論ずることに意味がある。
プロジェクトに中心をもたないとはいえ、本年度の活動としてはデザインの領域が軸となり、映像、空間演出を基盤としており、「映像」を中心に建 築的な考え方からパフォーマンスとの関係性を見つけだそうとしている。アイディアをシェアしていく方法としても映像はとても重要な役割になっているという。
その上で重要なことは、映像とあまり接点がなかった演劇、パフォーマンスなどを専門としてきた方々がその映像メディアの性質を理解しなければいけないということである。そうしなければ、ただのツールになってしまう。映像には、強い表現力があるため、そこに負けない表現力の強さが必要であることも理解していく必要があるようだ。
映像を投影するのに好条件ではない場所を発表の場としたのも、映像の可能性を見直すために行ってきたことだという。
成果を発表するためにも記録のメディアとして映像表現は重要であるが、それをどうやって編集し、配信していくのか。映像が簡単に作れる現代だからこそ慎重に捉えて表現していくことが必要であるように思う。[須田有希子]
■講演者プロフィール
1959年長崎県生まれ。図書館情報大学大学院修了。現在、東京芸術大学大学院映像研究科メディア映像専攻教授。
専門は、情報学、メディア論、データベース、アーカイヴ、コミュニティデザイン、地域経済と文化芸術振興。
データベースやアーカイヴの構築を実践しながら、近代以降の社会思想とメディアテクノロジーが知のあり方に与えた影響を考察している。
主な著書に『人間交際術』(平凡社新書)、『東京ディズニーランドの神話学』(青弓社)、『インタラクティヴ・マインド』(NTT出版)などがある。