アートマネジメント講座 #007:
プロジェクトの記述:編集とドキュメンテーション

Category: アートマネジメント講座

#007

プロジェクトの記述: 編集とドキュメンテーション

2014.01.08 (wed)

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講師:藤崎圭一郎
東京藝術大学美術学部デザイン科准教授

 

■講座概要

インターネット以前は、アートやデザインの展覧会の記録は紙本のカタログ、情報発信は主に雑誌であり、

専門雑誌が批評もアーカイヴも一手に担ってきた。

しかし現在は電子書籍、SNS、映像投稿サイト、ブログ、書店で流通する紙本、オンデマンド本、フリーペーパーなど、さまざまな媒体が生まれ、

目的や対象や予算などの制約に応じて、発信者がメディアを使い分ける時代となっている。

CD-ROMをメディアとしたマルチメディアソフトが廃れたように、ネットがはたして記録媒体に向いているかは再考すべき問題であり、

ネットが批評を展開させる空間として向いているかも議論すべき問 題である。

本講義では、講演者がジャーナリストまたは編集者として制作してきた紙本、電子書籍などの実例を紹介しながら、

ネット時代の発信・批 評・記録の媒体のあり方を考える。
 

 

■レビュー

講座を通して雑誌やCD-ROMの低迷を、社会的な流れの中で発生し得る「消えるメディア」として位置付けし、これらが、情報を構造化してみせるのには適した媒体であったという利点を指摘された。それとともに、インターネット上で起こる、情報を構造体として伝達する手法の崩壊について、これら「消えるメディア」との比較を用いて、直面する課題と可能性が分析されていた。お話をお聞きして考えさせられるのは、現代のインターネットの普及と、雑誌等の紙媒体の衰退などの社会傾向の変化により、ものごとを、メディアを通して伝えることの役割と、そこに付随する身体的、感覚的な比重の変化についてである。紙媒体が、個人の所有物という漠然とした感覚をもたらし、その構造の中に読者を取り込んでいく。それに対して、インターネットは、個人に属すこともなく、パッケージ化しにくい情報の海である。これらの感覚の違いが、情報伝達プロセスの相違としてあきらかに存在している。しかしながら、アーカイヴとしての多様化されたメディアの役割となると、インターネット、紙媒体、更には電子書籍等、複合的な記録の伝達方法によって、互いにそれぞれの長所を生かすことで多角的に情報をコントロールしうる可能性を大きく秘めていると感じた。また、ジャーナリストとしてのご自身のブログのように、加筆更新しつつも、それ自体を特定のテーマに関するアーカイヴとして活用されている様子などは、その場で記録し、読者との情報共有の図れる「生きたアーカイヴ」としての発展性について示唆されていたように思う。[高森奈央子]
 

 

■講演者プロフィール

デザインジャーナリスト。編集者。1963年横浜生まれ。1986年上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。

1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。

2010年より東京藝術大学美術学部デザイン科准教授。著書に広告デザイン会DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』。

企画編集を手がけた書籍に、アーティスト、タナカノリユキの作品集 『Pages』(光琳社出版 1996年)、

『本—TAKEO PAPER SHOW2011』(平凡社)。