空間像を描く
Category: 平行する交差展
向井知子[映像空間演出/デザイン学科准教授]
視覚が身体的手がかりにしているのは、かつて絵の具でパースペクティヴを描いていた頃の視覚と身体の記憶であり、空間の広がりと質量をきめる空間軸[ベクトル]と質感をきめる色層[レイヤー]が、空間像の組み立ての基礎をなす。
本年度のプロジェクトにおいては、パフォーマーの動きによって展開される空間の質量を記号譜に記述し、それを現実空間で3次元的に投影し直すことで、もう一度パフォーマー自身が記号譜の示すベクトルを元に振付を再生するという試みを、スタディならびに本展で実施した。
印刷の色分解に使われるCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)を、あえて光の三原色RGB(赤・緑・青)を出力とする映像の基調とし、絵画的な質感をもった空間像の表出を図った。ひとつは、異なるシアン(C)のテクスチャアの層を重ねることで、対流し奥(Z軸)へと広がる光景、もうひとつは、ピンク(M)から黄色(Y)への多重な色面のグラデーションの変化が、奥(Z軸)から横(X軸)へと設置されたスクリーンに、空間的広がりを委ねた心象的かつ体験的光景である。