アートマネジメント講座 #002:
プロジェクトプロデュースとアーカイヴ
#002
プロジェクトプロデュースとアーカイヴ
2013.10.17 (thu)
講師:桂英史
東京芸術大学大学院映像研究科教授/メディア研究・情報学
■講座概要
プロジェクトプロ デュースとアーカイヴという視点から、近年多様化するプロジェクトについて考察していく。
実際に従事した公共施設に関するプロジェクトを事例に「プロジェクトとして実現したもの」
「プロジェクトとして成立しても実現に至っていないもの」「プロジェクトとして実現したが成功したとはいいがたいもの」といった視点から解説する。
また、成果が見えにくい長期プロジェクトにも触れ、映像が作品化されるとはどのようなことをさすのか、
プロジェクトのドキュメントとしての映像の役割についても考えてみる。
■レビュー
プロジェクトが実現できていることが、必ずしもプロジェクトとはいわない。条件やその時の状況により、実現不可能、保留になることもある。プロジェクトとは、期間内に対称、目的が明確である何かを起こすことである。また、プロジェクトにはストーリー(脚本)は存在しない。規模の縮小や予算の都合によって、思い描いたように事は進まない。
そのイレギュラーな事態が当たり前であるプロジェクトをどうアーカイヴしていくのか。それは、取捨選択をせず、残せるものは残すということである。それらを整理し過ぎてはいけない。後世の人が分析、解析、吟味することによって価値を見つければ良いのである。しかし、資料をわかりやすい状態にしておくことも重要だ。保存状態に気を遣い、データであれば、再生をいつでも可能にしておくように保存する。そうすることにより、ものを中心にして言説が始まる。想像力を膨らまし、ものに価値を与えることによって、物語が始まる。そのためには、とにかく何でも担保することがアーカイヴなのである。
社会の投げかけでもあるプロジェクトを進行することは重要であるが、プロジェクトが終了したあと、どのようにアーカイヴするかが、今回話をお聞きして、より重要な項目であるように感じた。その保存状態によっては、後世の評価に影響することもあるだろう。そして、そのアーカイヴをきっかけに発展したプロジェクトも生まれる可能性もあると考えると、アーカイヴというのは、決して無下にはできないものである。[須田有希子]
■講演者プロフィール
1959年長崎県生まれ。図書館情報大学大学院修了。現在、東京芸術大学大学院映像研究科メディア映像専攻教授。
専門は、情報学、メディア論、データベース、アーカイヴ、コミュニティデザイン、地域経済と文化芸術振興。
データベースやアーカイヴの構築を実践しながら、近代以降の社会思想とメディアテクノロジーが知のあり方に与えた影響を考察している。
主な著書に『人間交際術』(平凡社新書)、『東京ディズニーランドの神話学』(青弓社)、『インタラクティヴ・マインド』(NTT出版)などがある。